芋の葉や赤く眼にしむ赤蜻蛉
谷風に吹きそらさるる蜻蛉かな
二三本鶏頭植ゑて宿屋かな
虫ばんで古き錦や葉鶏頭
打網の竜頭に跳る鱸かな
石灰を秋海棠にかくるなよ
秋海棠の広葉に墨を捨てにけり
ひとりゐて静に蘭の花影かな
花見えて四五枚蘭の長葉かな
コスモスの花に蚊帳乾す田家かな
菱の実と小海老と乾して海士が家
ほそぼそと起き上りけり蕎麦の花
山の上の月に咲きけり蕎麦の花
きびきびと爪折り曲げて鷹の爪
大男のあつき涙や唐辛子
唐黍を四五本植ゑて宿直かな
もろこしや節々折れて道の端
木犀や月の宴の西の対
冷やかに住みぬ木の影石の影
秋水に根をひたしつも畳草
秋水や生えかはりたる眞菰草
本堂に秋の夕日のあたりけり
秋の日に泰山木の照葉かな