和歌と俳句

落とし水

雨乞の小町の果やおとし水 蕪村

村々の寝ごころ更けぬ落し水 蕪村

足あとのなき田わびしや落し水 蕪村

竜王へ雨を戻すやおとし水 蕪村

温公の岩越す音や落し水 蕪村

落水田ごとのやみとなりにけり 蕪村

落し水柳に遠く成にけり 蕪村

足跡にひそむ魚あり落し水 蕪村

阿武隈や五十四郡のおとし水 蕪村

小山田の水落す日やしたりがほ 太祇

君が代や調子のそろふ落水 子規

おもしろや田毎の月の落し水 子規

泥亀のながれ出でたり落し水 漱石

落水浮草咲いて流れけり 鬼城

落し水鳴る洞ありて吸ひにけり 蛇笏

草の花の畦を破るや落し水 泊雲

落し水ひつさげ出づる鍬かろし 泊雲

夕空に月あるなしや落し水 万太郎

野分雲夕田ごうごうと落し水 泊雲

落し水夕べに夜をつなぎけり 喜舟

落し水跣の下にきこえけり 青畝

落し水たたずむほどに音高く 爽雨

一勺の酒の機嫌や落し水 青邨

落し水田廬のねむる闇夜かな 蛇笏

古縄にすがれる蟹や落し水 爽雨

月虧けて山風つよし落し水 蛇笏

門に出て夫婦喧嘩や落し水 虚子

道の上澄み拡がれる落し水 泊雲

さゝ濁りしばしに澄みぬ落し水 石鼎

田から田の段々水を落しけり 犀星

落し水母の白髪のきはまりぬ 耕衣

落水の利根がかなづる夕かな 普羅

ひとの田のしづかに水を落しけり 耕衣

母恋し首を伸して落し水 不死男

少年の虚実いきいき落し水 不死男