向日葵の金の古びや秋の風
横顔にさす月厭ふ踊かな
芋畑に四五基の墓のかくれけり
唐辛子赤く辛くとつくりけり
合歓の実の薄きを透す秋日かな
月さすや影の倒るゝ太柱
月の客ありて山門しめざりき
月に冷えて家に戻りし五体かな
月さすやいにしへ塗りし仁王の朱
灯二つに沈まぬ島や天の川
草花を皆句に作り子規忌かな
色鳥や道に消えたる古峠
毛氈を敷けば雨降る紅葉かな
鶏頭や団十郎の何の隈
絵襖の鶴翔けに翔け夜長かな
懶さも暑さも残る己かな
釣鐘に射して冷えたる秋日かな
秋晴の境内の音は微塵かな
広く深く恐ろしきまで星月夜
落し水夕べに夜をつなぎけり
汐風に欠けゆく墓や葉月汐
金粉の散ると見えたる鳴子かな
野路朗ら袋蹴りゐる螽かな
落鮎や海となりたる蘆の風
鰡飛ぶや洲崎の鼻は棒の如