和歌と俳句

野村喜舟

灰降れば浅間と思ふ鶏頭かな

帷子の紺あでやかに初嵐

秋風や旅の女と小峠と

稲妻や赤城幾峯八つ裂に

稲妻や家居置きたる山の原

秋祭小さき柿をかじるかな

魂まつり故人桔梗を好みけり

芋角豆蝋燭継ぎぬ魂棚

走馬燈寝静まる子に廻りけり

走馬燈初雁来ると廻りけり

くさぐさにあはれ一句の盆供かな

寺山の小萩が招くかな

新米や瓦硯をとりいだし

箱膳に南無醍醐味の柚味噌かな

初雁や銀短冊の五六枚

来るや黒縮緬の染上り

鳴くや香取鹿島の二柱

鶉たつ道陸神のほとりかな

嘴の茨鋭き眼白かな

鶏頭は増上慢の菩薩かな

海士が家や鶏頭赤く波頭

鶏頭やお伝の墓の天王寺

茸山の尾上の鐘をきゝにけり

文月や豆腐の白にある一偈

文月や屋根美しき観世音