和歌と俳句

魂祭

まざまざといますが如し魂祭 季吟

蓮池や折るらで其まま玉まつり 芭蕉

熊坂がゆかりやいつの玉まつり 芭蕉

玉祭りけふも焼場のけぶり哉 芭蕉

数ならぬ身となおもひそ玉祭り 芭蕉

人の親くるとばかりや玉まつり 鬼貫

こころにて顔にむかふや玉まつり 鬼貫

寐道具のかたかたやうき魂祭 去来

こちらからいはせてばかり魂まつり 千代女

蓑むしも父よぶころや魂祭り 也有

蚊のしらぬ客あはれ也魂まつり 也有

あぢきなや蚊屋の裾踏魂祭 蕪村

徹書記のゆかりの宿や魂祭 蕪村

魂祭王孫いまだ帰り来ず 蕪村

遺言の酒備へけり魂まつり 太祇

おもへども一向宗やたま祭 太祇

たま祭持仏に残す阿弥陀かな 太祇

侘しさや寝所ちかき魂祭 召波

賑しやよき世の人の魂祭り 青蘿

なるゝ間のなきもはかなし魂祭 青蘿

魂まつり貧家の情ぞまことなる 白雄

魂祭ふわふわと来る秋の蝶 子規

親もなき子もなき家の玉まつり 子規

見た顔の三つ四つはあり魂祭 子規

つらつらとならび給へり魂祭 子規

おろそかになりまさる世の魂祭 子規

聖霊の写真に憑るや二三日 子規

病んで父を思ふ心や魂祭 子規

魂棚の見えて淋しき寝覚めかな 鬼城

霊棚やしばらくたちし飯の湯気 蛇笏

魂祭るものかや刻む音さやか 水巴

むらさきに変りし蓮や霊祭 夜半

こしらへのもなかの舞子魂まつり 夜半

霊棚に仕ふるひとりふたりかな かな女

よべの雨閾濡らしぬ霊祭 不器男

魂まつり故人桔梗を好みけり 喜舟

芋角豆蝋燭継ぎぬ魂棚に 喜舟

魂棚や草葉をひたす皿の水 蛇笏

いねし子に電車ひびくや魂祭 水巴

門閉ぢて新月楡に魂まつり 蛇笏

嫂のながき話や霊まつり 青畝

兒を抱いて尼うつくしき靈祭 蛇笏

業火免がれ暁けの魂棚灯る家 蕪城

短冊を父とかしづく魂祭 誓子

靈まつる燭にまちかくひとり寝る 蛇笏

恩友に忠友たり得よ魂祭 草田男

野の草のやや亂れ居る魂祭 耕衣

ほゝづきのわかき青さや魂まつり 真砂女