和歌と俳句

上嶋鬼貫

雲の峰なんぼ嵐の崩しても

夕立や隣在所は風ふいて

夏草に身をほめかれて旅の空

夏の日を事とも瀬田の水の色

涼風や虚空にみちて松の声

あの山もけふのあつさの行衛哉

日盛を花とみたらし明日も来ん

しらぬ人と謡問答すずみ

冬は又夏がましぢやといひにけり

しよろしよろと常は流るる大井川

須磨に此あづまからげやしほ衣

木神せよ油しめ木の音ばかり

そよりともせいで秋たつことかいの

ひらひらと木の葉うごきて秋ぞたつ

心ほぼ起て秋たつ風の音

初秋のどれが露やら雨の露

あはれげもまたほめく夜の秋の風

朝も秋ゆふべも秋の暑さ哉

桐の葉は落ても下に広がれり

人の親くるとばかりや玉まつり

こころにて顔にむかふや玉まつり

こぼるるにつけてわりなし萩の露

内蔵に月もかたぶく萩の露

そちへふかばこちらへ吹ば秋の風