雲の峰なんぼ嵐の崩しても
夕立や隣在所は風ふいて
夏草に身をほめかれて旅の空
夏の日を事とも瀬田の水の色
涼風や虚空にみちて松の声
あの山もけふのあつさの行衛哉
日盛を花とみたらし明日も来ん
しらぬ人と謡問答すずみ哉
冬は又夏がましぢやといひにけり
しよろしよろと常は流るる大井川
須磨に此あづまからげやしほ衣
木神せよ油しめ木の音ばかり
そよりともせいで秋たつことかいの
ひらひらと木の葉うごきて秋ぞたつ
心ほぼ起て秋たつ風の音
初秋のどれが露やら雨の露
あはれげもまたほめく夜の秋の風
朝も秋ゆふべも秋の暑さ哉
桐の葉は落ても下に広がれり
人の親くるとばかりや玉まつり
こころにて顔にむかふや玉まつり
こぼるるにつけてわりなし萩の露
内蔵に月もかたぶく萩の露
そちへふかばこちらへ吹ば秋の風