高値の靴かにかく買へり祭笛
子を抱くや林檎と乳房相抗ふ
四十路さながら雲多き午後曼珠沙華
亡き友肩に手をのするごと秋日ぬくし
友に死なれ宗匠じみて秋風に
はたはたや退路絶たれて道初まる
末枯や御空は雲の意図に満つ
鰯雲個々一切事地上にあり
鳴くまでは鳴かぬ冬鵙市騒ぐ
散紅葉人なつかしく重なりて
比喩もろとも信仰消えて枯野の日
笹鳴や職場に知己ある謂なし
寒き母持物すべて胸に抱き
冬木立汝来しかと雫打つ
国は予後雪月明の捨て車輪
帰郷者の如く橋辺に日なたぼこ
わが背丈以上は空や初雲雀
遠蛙独りて生くる齢なる
ラグビーのせめぐ遠影ただ戦後
雲雀の音曇天掻き分け掻き分けて
黴る日々不安を孤独と詐称して
黴の宿よぢれて燃ゆる生命の日
恩友に忠友たり得よ魂祭
新盆や絵巻は雲の帯長く