橇駆る子等や喪へ行く我の足遅し
青空や雪の浅間の両開き
深雪道来し方行方相似たり
空は太初の青さ妻より林檎うく
斯かりし母よ育児の妻よ風の柘榴
寒の暁ツイーンツイーンと子の寝息
金星や賜ひし炭を火にしつつ
もの言へば雑炊焦げの舌にがし
共に雑炊喰するキリスト生れよかし
春も青し寮の玻璃戸の月なれば
杉菜の雨民の竃の一つを焚く
耕せばうごき憩へばしづかな土
我が馬鈴薯実のれ燕雀たのしげなり
実桜や折紙細工の本が形見
蝌蚪小さし浮かびて消ゆる水泡よりも
写真の中四五間奥に薔薇と乙女
童話書くセルの父をばよぢのぼる
吾子のセル涙と涎玉とはぢき
雷一過青と金とに孔雀濡れ
孔雀水平に尾を支ふ五月の海如何に
枯枝も相組めオリオン正しきに
悴みてひとの離合も歪なる
真横へと走せし流星地に疎し
息の白さ豊かさ子等に及ばざる
瑠璃蜥蜴故郷焼けて海残りぬ