和歌と俳句

中村草田男

来し方行方

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鵙高音大学以前の日に似たり

病むを訪ふ睫毛にあまる冬落暉

柱廊が影曳く子無き毛糸編み

残雪光袋に透いて菓子の影

朝顔の花筒女の咽喉ふくらか

凌霄は妻恋ふ真昼のシャンデリヤ

夜半の夏人形の目は目をそらさず

郭公やちゃんちゃんこ手に子探しに

秋草に昔のひとの娘吾妻佇つ

横向きの雛の手白し行きずりに

怠たりそ疲れそ苺なども食べ

梅雨の夜の金の折鶴父に呉れよ

脚下の冬汽車がもつとも白ら煙

睡重りを横抱き急ぐ冬三日月

吾子の母乳房もやすき懐手

あたたかな二人の吾子を分け通る

店深く買ふ妻見つつ春寒に

新樹どち裹まんとし溢れんとす

窓にそむく月の夏富士出でて仰ぐ

睡蓮に雨意あり胸の釦嵌む

睡蓮の葉の押さへたる水に雨意

汝等老いたり虹に頭上げぬ山羊なるか

人ひとり簾の動き見てなぐさまんや