鵙高音大学以前の日に似たり
病むを訪ふ睫毛にあまる冬落暉
柱廊が影曳く子無き毛糸編み
残雪光袋に透いて菓子の影
朝顔の花筒女の咽喉ふくらか
凌霄は妻恋ふ真昼のシャンデリヤ
夜半の夏人形の目は目をそらさず
郭公やちゃんちゃんこ手に子探しに
秋草に昔のひとの娘吾妻佇つ
横向きの雛の手白し行きずりに
怠たりそ疲れそ苺なども食べ
梅雨の夜の金の折鶴父に呉れよ
脚下の冬汽車がもつとも白ら煙
睡重りを横抱き急ぐ冬三日月
吾子の母乳房もやすき懐手
あたたかな二人の吾子を分け通る
店深く買ふ妻見つつ春寒に
新樹どち裹まんとし溢れんとす
窓にそむく月の夏富士出でて仰ぐ
睡蓮に雨意あり胸の釦嵌む
睡蓮の葉の押さへたる水に雨意
汝等老いたり虹に頭上げぬ山羊なるか
人ひとり簾の動き見てなぐさまんや