和歌と俳句

中村草田男

来し方行方

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掌の白桃父の願ひぞ子に実りぬ

白桃や彼方の雲も右に影

日盛りや時打つ余韻時計の中

日盛りに出世有縁の狆の顔

若き日焼けレイスの白き模様乗り

晩涼の銀貨笑む吾子みなたまもの

撃ちしにみどりも紅も亦黄もなし

またたけどまたたけど睫毛の雨

壁を負ふ後髪をば秋の風

道の元砂利の広場や天の川

万物齢の類を異にす天の川

冬の虹消えぬ強さもやさしさも

笑ひ声冬日の鉄路汝居ぬ世

蜥蜴ゆく騎士行進の四蹄の間を

眼澄む犬馬は騎士の汗の伴

智の蛇嗤ふ個の命数の砂時計

炎天の馬衣は緋ならめ髑髏は白

騎士は負ふ故友茅舎の露の崖を

地の上の夏山の上祖国の城

騎士の別れ故山や夏樹岩に栄ゆ

名を換えよ騎士と夏山誰が世ぞ