掌の白桃父の願ひぞ子に実りぬ
白桃や彼方の雲も右に影
日盛りや時打つ余韻時計の中
日盛りに出世有縁の狆の顔
若き日焼けレイスの白き模様乗り
晩涼の銀貨笑む吾子みなたまもの
撃ちし蚊にみどりも紅も亦黄もなし
またたけどまたたけど虹睫毛の雨
壁を負ふ後髪をば秋の風
道の元砂利の広場や天の川
万物齢の類を異にす天の川
冬の虹消えぬ強さもやさしさも
笑ひ声冬日の鉄路汝居ぬ世
蜥蜴ゆく騎士行進の四蹄の間を
眼澄む犬馬は騎士の汗の伴
智の蛇嗤ふ個の命数の砂時計
炎天の馬衣は緋ならめ髑髏は白
騎士は負ふ故友茅舎の露の崖を
地の上の夏山の上祖国の城
騎士の別れ故山や夏樹岩に栄ゆ
名を換えよ騎士と夏山誰が世ぞ