和歌と俳句

天の川

白秋
天の河 棕梠と棕梠との 間より 幽かに白し 闌けにけらしも

赤彦
いとどしく夜風にさわぐ桑畑に天の川晴れて傾きにけり

赤彦
天の川夜空のなかにまさやかに明るむ雲の心地こそすれ

天の川の下に天智天皇と臣虚子と 虚子

銀漢の瀬音聞ゆる夜もあらむ 龍之介

散る葉見つつものぬくみなし天の川 水巴

銀河濃し救ひ得たりし子の命 久女

話声奪ふ風に野を行く天の川 亞浪

灯二つに沈まぬ島や天の川 喜舟

鉢棚の樹々の葉濡れし銀河かな 橙黄子

簾捲かせて銀河見てゐる病婦かな 久女

天の川流れ変りぬ白鷺城 播水

牧水
天の河さやけく澄みぬ夜ふけてさしのぼる月のかげはみえつつ

天の川枝川出来て更けにけり 花蓑

曇り来し銀河に瀬々の光りかな 石鼎

銀漢や軒に吊るせし唐辛子 石鼎

麓の灯いつかは消ゆる天の川 石鼎

コスモスの花に燃えつく銀河かな 石鼎

竹山の竹のひしめき天の川 亞浪

海の門や二尾に落つる天の川 誓子

千樫
山の上のみ寺にあれば天の川よひよひ清くさきらかに見ゆ

千樫
宵闇の旧街道をわがくれば天の川白し芦の湖の上に

月魄にけぶりそむなり天の川 夜半

天の川この秋の客誰々ぞ 禅寺洞

銀漢や露営人出て歩きゐる 草城

銀漢や酔余の漫歩とどまらず 草城

銀漢や大廈まだ寝ぬ窓一つ 草城

籐椅子のここにも一つ天の川 草城

湯崎の灯見えて儚なし天の川 草城