和歌と俳句

天の川

ブザー鳴る夜学の銀河の行方かな 汀女

銀河の下ひとり栄えて何かある 草田男

馬と寝る屋の上に高嶺天の川 草田男

窓の銀河仔馬のいびき高らかに 草田男

銀漢や吾に老ゆといふ言葉きく 立子

銀河延々手に一片の学位あり 静塔

天の川いづこの藪もすさまじく 槐太

母病むや樹々のはざまの天の川 信子

昼の間の出来ごと遠く天の川 立子

銀漢にわが家小暗く灯りをり 立子

銀河中天老の力をそれに得つ 虚子

銀河西へ人は東へ流れ星 虚子

虚子一人銀河と共に西へ行く 虚子

遠く病めば銀河は長し清瀬村 波郷

いそぐほど銀河の流れさからひて 多佳子

女一人佇てり銀河を渉るべく 鷹女

天の川鉄路の欠けの八里ほど 誓子

銀河依然芽のまま萎えし病の芽 草田男

横町のそのまた露地や天の川 万太郎

前山の漆屏風に天の川 秋櫻子

銀河より聞かむエホバのひとりごと 青畝

墓山より城山かけて天の川 草田男

九頭竜の涯の燈台天の川 青畝

銀河より享ける微光や林檎かむ 静塔

大銀河誰かラヂオを衰へさす 静塔

銀河濃し枕に頬を埋め寝る 立子

銀河の尾死と振替に一句集 不死男

銀漢や峰越の疾風うちひびき 秋櫻子

天の川の下の下部の湯に一夜 青畝

燈を持たず来し堂塔の天の川 誓子

酔ひし日は睫毛に触れし天の川 楸邨

三鬼亡き磯は一すぢ天の川 波郷

天の川垂れて伊良虞は島ならず 青畝

火の山は仮のかたちぞ天の川 青畝

暗き火の奥も火が見ゆ天の川 楸邨

ねたきりのわがつかみたし銀河の尾 不死男