コスモスに藍濃き衣を好み著る
たそがれの蟷螂母を威し去る
こほろぎを夫が聴く夜は筆おいて
蓑蟲の相逢ふ日なし二つゐて
鶏頭の素朴が好きで日が暮れて
人妻の袂の丸み燕去る
女老い七夕竹に結ぶうた
夕べ出てをとこも買ふや草の市
いちじくや才色共に身にとほく
老いざまや万朶の露に囁かれ
老の語のきよらかさ露りんりんと
昼も蟲まぬがれがたき老を身に
鵙騒ぐ鏡面醜をあざやかに
無花果をもぐに一糸を纏はざる
雁渡るをんなの影を地に残し
九月萩こよなく愛す古つまを
生涯の悪筆雁が鳴きわたる
老い急ぐ秋光を身にびつしりと
後の月五臓六腑をおし照らす
女一人佇てり銀河を渉るべく
白露や死んでゆく日も帯締めて
初鵙や過去に棒線太く引く
柿啖ふ少女の美貌樹に跨がり