和歌と俳句

三橋鷹女

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カンナ秋幼な馴染が鉄を打つ

戦死報着けりかまつか燃ゆるへに

寡婦となりし瞳をかまつかに注ぎゐる

遺児の身丈雁来紅の間をあゆみ

鵙高音雁来紅は黄をのこす

蜻蛉群れ朝の街路樹黄にさやぐ

蜻蛉群れ鋪道出勤の刻となる

の街瀬戸物屋あり佇ちどまる

の街に買ひしは白き飯茶碗

一隊の兵馬過ぎ行けりの街

ゆふぐれのひびき彩なしの街

の街碧きポストをなつかしみ

兄の墓ゆすぶり恋へり秋来ぬと

鳴けば兄の墓動くかと思ふ

父の墓赤いけいとうは侘し過ぎる

父の墓に濡れをり拭ひやる

父の墓兄の墓にも霧降れり

木犀の香にあり心あらがはず

秋の空蒼し秋空に対きて恥づ

秋蒼し昔のノート引きちぎり

秋刀魚焼く憎しみは鋭き焔に焼かれ

あす死ぬるいのちかも知らず秋刀魚焼く

蟷螂も燃ゆるカンナの中に棲めり

蟷螂の貧しき朝餉吾が朝餉

カンナ散る蟷螂を殺ししは吾子か