和歌と俳句

三橋鷹女

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

櫓がきしむ野分の底も強野分

秋風が吹き分く老の髪密に

からかさにばつたを入れて長い人生

秋蝉の鳴くひきしほのごとくなり

湧きに湧き怺へに怺へ緋のカンナ

街道に咲く痩カンナ痩老婆

芒野に欠け皿ならべなみだのたらちね

杖となるやがて麓のをみなへし

巣ごもれり細眼に蘆を刈り揃へ

火祭のしんがりを行くちちとはは

山中に人を呼び入れ紅きのこ

曼珠沙華うしろ向いても曼珠沙華

東西南北いづこも濡れる濡れ桔梗

渡る賽の河原に石積まれ

生み月や鬼灯に灯がともり初め

どんぐりの樹下ちちははのかくれんぼ

千の鳴く一匹の狂い鳴き

影を織る水引草の夜明けかな

骨透いてよ不眠の夜が来る