和歌と俳句

白露や穂草茫茫ちかよれず 多佳子

たてよこに流れ合ひけり村の露 耕衣

富士の露すでに八方露に伏す 楸邨

わが家なき露の大地ぞよこたはる 楸邨

八一
けさのあさゑがきしきくのしらつゆのかわきなはてそとしはへぬとも

朝の日を宿して落つる露の玉 虚子

白露の広き菜園一眺め 虚子

三行の葉書だよりの露の情 風生

露の宿掃き出す塵もなかりけり 風生

捨てありし露の箒をとりしあと 風生

露びたりして瑠璃光の伽藍かな 青畝

大露に野の神ぬれて在しけり 普羅

山吹の落葉し尽す露の川 蛇笏

耳張つて栗鼠走せ満目露の光 草田男

栗鼠失せて露の巨幹と老の杖 草田男

露しぐれわれ老いわが句古びゆく 草城

白露や紙に血ぬりしはけさのこと 草城

白露に石のおもざしかはりけり 草城

動かんとする朝露に日は真紅 林火

牛が頚伸ばして濡るる露の秋 波郷

焼跡にあたらしく来し露の歌 波郷

白露やわが在りし椅子あたたかに 多佳子

伏目に読む睫毛幼し露育つ 多佳子

露の中つむじ二つを子が戴く 多佳子

白露や鋼の如き香をもてり 多佳子

露の丘のぼれば空が肩つつむ 林火

露のんで猫の白さの極まるなり 楸邨

猫と生れ人間と生れ露に歩す 楸邨

乳児のねむり落下のごとし露の中 楸邨

一夜寝て露白光の外科個室 波郷

露燦々腋をあらはに剃られをり 波郷