和歌と俳句

竜胆 りんどう

竜胆や岩のへげめの日にうとき 暁台

左千夫
露霜に色のさびたる紫の竜胆の花よわれ思多し

左千夫
ここにして思はんよりは走りゆき手とりなげかむ

赤彦
露霜をしげみ寒けみ富士見野の龍膽の花紺ならんとす

土屋文明
赤城根の秋の木の間にりんどうは紫にして実をはらみたり

土屋文明
りんだうは実をもちながら紫のいよいよ深く草に交れり

土屋文明
霜ふれば霜に枯れゆく山の上に濃き紫のりんだうの花

竜胆や風落ち来る空深し 龍之介

山の声しきりに迫る花竜胆 亞浪

好晴や壺に開いて濃竜胆 久女

龍胆の太根切りたり山刀 かな女

濃竜胆浸せる渓に櫛梳り 久女

龍膽をみる眼かへすや露の中 蛇笏

牧水
つづらをりはるけき山路登るとて路に見てゆくりんだうの花

牧水
さびしさよ 落葉がくれに 咲きてをる 深山りんだうの 濃むらさきの花

牧水
摘みとりて 見ればいよいよ 紫の いろの澄みたる りんだうの花

牧水
越ゆる人 まれにしあれば 石出でて 荒き山路の りんだうの花

牧水
笹原の 笹の葉かげに 咲き出でて 色あはつけき りんだうの花

赤彦
谷寒み紅葉すがれし岩が根に色深みたる竜胆の花

赤彦
岩が根に早旦ありける霜とけて紫深しりんだうの花

赤彦
霜とけてぬれたる岩の光寒し根をからみ咲くりんだうの花

かたはらに竜胆濃ゆき清水かな 風生

銀婚の妻のみちべに濃竜胆 青邨

たづさふや竜胆折りし妹が手を 誓子

竜胆やここに陥ちたる山の径 誓子

竜胆や月雲海をのぼり来る 秋櫻子

竜胆に人里遠くなりにけり 播水

阿蘇がなつかしいりんだうの花 山頭火

雨ためて竜胆花を覆へす 普羅

あしもとのりんだう一つ二つひらく 山頭火