和歌と俳句

今日明けて万朶の露を見たりけり 石鼎

老いざまや万朶の露に囁かれ 鷹女

老の語のきよらかさ露りんりんと 鷹女

白露や死んでゆく日も帯締めて 鷹女

鉛筆で指さす露の山脈を 楸邨

楠多き中にも巨樹の露しぐれ たかし

露の夜は露呼ぶ肌の如来とよ たかし

堂塔の霧深き夜の佛たち たかし

山々の近むとみしや露しぐれ 蛇笏

瞳をつむり一語一語が露となる 鷹女

勤める如家出て直ぐに露の坂 誓子

白露に田舎司祭の爪の垢 静塔

赤富士に露の満天満地かな 風生

露深しとのみいひてあゝわれ止まむ 万太郎

わが唄はわがひとりごと露の秋 万太郎

露深し遠き思ひ出あざやかに 草城

何がうそでなにがほんとの露まろぶ 万太郎

露の音をりから蟲の音にまぎれ 万太郎

赤富士に露滂沱たる四辺かな 風生

赤富士に万籟を絶つ露の天 風生

北上す夜汽車の露の連結器 林火

しらつゆのうつりゆく刻うつしけり 万太郎

露に、つゆに、露にうもるゝものばかり 万太郎

白露や大たわみせし萩の枝 立子

白露や切株にあるくさび痕 波郷

山鳩の迎へ音露の歩行標 波郷

露ちるや鳩降り尾長鳥つづき 波郷

露の降る音かも知れず耳すます 立子

戸の鈴にスイスの音よ露の宿 青畝

露の登校児歩を留め考へ歩き出づ 波郷

一粒や睡りの隅に露を置く 不死男

白露や世渡りの猪現わるる 耕衣