露の世の又書く手紙墨書もて
秋の蚊を払へばほろと消えにけり
笹岡は水清き村野菊晴
東屋に昼の蟲きゝ歌心
坐り見て暖かかりし芝紅葉
秋晴に我焦げてをる匂ひする
一念寺保存の話山の秋
虚子庵に集ふはうれし秋日和
冬支度広き住居をなげきつつ
行秋の一人の起居にも馴れて
白粉の花にホースの水流れ
萩叢の乱れや黄葉しそめつゝ
横川僧柿色衣薄紅葉
思はざる人より電話旅の秋
宍道湖や旅の我等に渡り鳥
残菊に朝の帚目新しく
露の降る音かも知れず耳すます
話しくる人に答へて秋の晴
来の宮は木の実降る宮ゆき見ませ
城の階小暗く急や秋の暮
朝顔や四つ目垣越え四つ目垣
禅寺の庭の帚目法師蝉
秋風はわが髪を吹き心吹き
秋晴のこよなき日なり山の家
秋雨に松美しき別墅かな