和歌と俳句

法師蝉 ほうしぜみ つくつくぼうし

つくつくぼうしもをはりの声の雨となり 山頭火

法師蝉しみじみ耳のうしろかな 茅舎

水引を折るにつけても法師蝉 汀女

帰り路はわが夕影や法師蝉 汀女

うたたねの母残し出て法師蝉 汀女

法師蝉の初蝉なれや鳴きをはる 草田男

木もれ日に背のひかりみえ法師蝉 石鼎

町を行く町につくつく法師鳴き 万太郎

江津神社とは御小さく法師蝉 汀女

法師蝉鳴く短さよふと暮るる 青邨

法師蝉朝より飢のいきいきと 波郷

法師蝉木々の彼方の朝の屋根 波郷

また微熱つくつく法師もう黙れ 茅舎

茶菓出でて後は静かに法師蝉 汀女

飯しろく妻は祷るや法師蝉 波郷

法師蝉聞き寝の庫裡のひろびろと たかし

ほふし蝉海の景色の裡にやむ 誓子

法師せみ山影浜にかぶさりつ 誓子

法師蝉あはせ鏡をする時に 誓子

法師蝉聞けばこころはうち向ふ 誓子

雨はれてつくつくぼふし雲に鳴く 誓子

前声をうけてつくつく法師蝉 誓子

法師蝉終りの声に近づけり 誓子