和歌と俳句

原 石鼎

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はしけやし露のぼりゐる糸すゝき

雨戸樋につく藁屑の月夜かな

畑すみに唐竹二本秋日和

下り鮎しづく床磐の瀬綾とも

無花果の初なりふうて話かな

暮れそむる峰に見つけし通草かな

匙をもてすくひ食ふべし通草かな

昼に見し鹿あるきをり天の河

蔵壁にひた着く葉ある芭蕉かな

大芭蕉壁をうしろに露しげし

朝冷やとうすみとんぼ真一文字

秋蝶の驚きやすきつばさかな

水澄んで底ひもしらずだいや川

神橋に晴れつゞく日や秋の水

お滝めぐり日ぐれをもどる秋の水

鳴子引くや雨のあとゝて重たかり

地をすりて結びだらけの鳴子

酸漿に滴たるゝよ秋時雨

秋時雨ふと遠ちかたの思はるゝ

夜の眼鏡蜜柑の皮にのせてあり

一斉にかまどの煙や秋深し

掘りあげし大自然薯や秋深し

かなかなや夕焼の濃さにつれて啼く

ひとりゐて見し日もありぬ今日の月

鍬をもてわけうつし植う雁来紅

よき苔につゝみてもどりけり

ゆく秋の我に人来て灯しけり