かへりみて何かたづねて門火かな
送火の燃え誰ぞや汲むはね釣瓶
送火の名残の去年に似たるかな
婆様はいつも物煮て芙蓉咲く
秋草に遊んでくるるよその犬
明るさはすぐ廣窓に秋の山
松手入れしてみちのくの港かな
花よりも白き渡雲月の屋根
家妻は案山子のもとに子を背負ひ
番犬にいたくおどろき茸売
書架すでに暗き背文字も秋の暮
さしのばす手の輝きて蝗取
あちこちに蝗取居り顔を上ぐ
目をとぢて秋の夜汽車はすれちがふ
吹き落ちしものを笞に野分の子
その後のなほ野分めく芙蓉かな
秋水に櫂深きとき舟疾く
蜻蛉釣る子に洗ひ髪母通る
温泉の里の丹のぼんぼりに秋出水
仮橋を先立つ犬や秋の暮
夜寒来て関門の朝あたたかく
秋の水やはらかに手によみがへる
江津神社とは御小さく法師蝉