柳散るあるじは鳥の紙芝居
噴水のましろにのぼる夜霧かな
とどまればあたりにふゆる蜻蛉かな
りいと鳴く蟲のこもれる芒かな
秋雨の夜の轍のつづきたる
ひとしきり出船さわぎや秋の風
かたまりて船見送りや秋の風
秋の暮並びしバスのひとつ出る
盂蘭盆や葵も高く花を終ふ
蜩に家より早き夕餉かな
蜩に母の姿を追ひあそび
遠けれどそれきりなれど法師蝉
法師蝉到るところに日影かな
ねむがりて子等寝しあとの蟲時雨
ほつほつと木犀の香に降つて来し
もろこしを焼くひたすらになりてゐし
鳳仙花咲くくらがりを来て踊
黒砂糖たうべつあるも踊連れ
母の顔見えければ踊りかくれけり
盆踊り果ててもどりて熟睡かな
コスモスや鐵條網に雨が降る
工場のいつもこの音秋の雨