青バナナづしりと垂れし秋暑かな
そのかみの玉座の屏の秋の塵
城壁に秋冷にはか汽車ひびく
柿の里山塊眉に迫りつつ
秋草の駱駝流し目旅をゆく
国境の森閑と秋の裘
行くほどに長城しかと秋日満つ
陵ありき山さはやけき日没に
驢馬よ曳けとはげます声の秋の暮
穂芒のそよりともせぬ野の真中
月の街大江の霧たちのぼる
月明に火屑こぼしつ長き汽車
磧にも道一筋や秋の暮
長江をそれしさびしさ月も痩せ
秋冷の重慶睡る裾に泊つ
鰯雲岩屏立す彼方かな
いわし雲何重たさや旅鞄
露草や室の海路を一望に
身をすざりつつこほろぎの高音かな
秋蝶山の西日のはげしさに
公園に入るる鉄材秋の暮
貸席の秋の夜泳ぐ金魚かな
あるじ振り先づ千本の葉鶏頭