和歌と俳句

店の柿減らず老母へ買ひたるに 耕衣

死後も貧し人なき通夜の柿とがる 三鬼

茂吉
柿に實の 胡麻ふきたるを 貰ひたり 如何なる柿の木になりたる實か

柿啖ふ少女の美貌樹に跨がり 鷹女

柿取るにまかせ庖丁縁にあり 虚子

苔寺へ道の曲りの柿の家 虚子

財宝のごとし大柿十七顆 草城

柿色の日本の日暮柿食へば 楸邨

すずなりに生らして奈良の柿渋し 青畝

ビルの前空は負はねど柿のつや 草田男

柿啖ふとほとばしるなり伊賀訛 楸邨

渋赤柿下に足跡辛くもあり 静塔

貴船出て立寄る柿の円通寺 虚子

ここも亦柿の村なる円通寺 虚子

柿食ふや電柱の辺の富士あはれ 波郷

柿の里山塊眉に迫りつつ 汀女

渋柿たわわスイッチ一つで楽湧くよ 草田男

秋の荷の一つふえしは柿の籠 立子

女すさまじひとりの顔が柿を食ふ 楸邨

柿の幹しづやかなる負荷に堪へ 誓子

西へ行く日とは柿山にて別る 誓子

成年の柿見惚る師の生家なり 林火

柿食ふや命あまさず生きよの語 波郷

柿食ふや膝あつきまで南の日 波郷

柿貪りこの暗き世とよくもいふ 楸邨

竿の先神経凝らし柿をもぐ 誓子

木曾谷や柿の漂ふ日の出前 楸邨

柿食ひし口や呆けし髭の中 波郷

病牀より長き手のばし柿拾ふ 波郷

柿食へり貪るに似しをゆるめ食ふ 波郷

深山柿やらずの雨となりにけり 不死男

筆柿や面会謝絶いつまでも 波郷

一枝呉れし清瀬の柿は禅子丸 波郷

髭かなし清瀬の柿の七衛門 波郷

昨日より今日むさぼりぬ次郎柿 波郷

柿をむく吉野翁の刃の迅けれ 爽雨

ふところに種ふとこぼれ柿うまき 爽雨

柿食うて暗きもの身にたむるかな 林火

香搗水車香をただよはす宙に柿 林火

柿寺に天女とつぎしままの白 静塔

柿照りて山のこだまを通すなり 林火

柿食うて残る齢は数へざる 林火