和歌と俳句

平畑静塔

墨染を脱ぐべき上り鮭となる

逆さ浪一期の鮭の上るなり

親鸞の許せし鮭の気絶棒

鮭川の由緒辿れば柿の里

勿来の名この鮭簗の関にこそ

木曾案山子操るものの吹きいでて

下山講花野に一人二人脱け

荒城に干して一俵分の稲架

八朔や最上は水位満ち足りて

垣もなく五穀成就の出羽さやか

ひぐらしの羽黒座りて耳学問

大音に落ちたるの怪我もなし

花野には蟠と書かるる巌あり

菊人形通ふ夜道をなしにけり

梨園の番犬を丸齧り

川上は隠れがほなり下り簗

下り簗大志の鷹はあらはれず

桐一葉いまだ梢の葉なりけり

妻の役火中のをせせり出す

柿寺に天女とつぎしままの白

父と母抱きて展墓の水を浴ぶ