流燈がすすむ心の音楽と
大文字手に乗る遠さ頒たむと
秋草を抜く二房の乳重たし
通勤の首を扼しては秋風
秋の夜や書淫まさしく子に伝はり
葡萄垂れさがる如くに教へたし
錐もみに鵙が国旗の朱を指し
稲穂波黒き楽器の箱を提げ
山高の案山子を典獄かと思ふ
こほろぎの真上の無言紅を裂く
栗を黄に剥きしや罪を怖れぬ手
レールの艶我等の秋暮貫きて
秋耕の夜の手に辞書の紙うすし
芋掘りし泥足脛は美しく
りぞーるの熱さ十指に秋の暮
青西日籠めて熟れつつ葡萄棚
壁穴のいとども加へ聖家族
太柱鈴虫の声飼はれゐて
蟷螂の浮足立てて皮聖書
新煉瓦積めばとつぷり秋の暮
投票に出るや一本野川澄み
セメントの坂の日向を葡萄摘
天辺や腋毛ゆたかの葡萄摘
手を拍つて大満月の牛を追ふ
金堂を秋晴に出し老大工