和歌と俳句

花野

谷へ飛ぶ山鳥の尾や花野道 かな女

蓬髪の人過ぎゆきし花野かな 石鼎

遠山の低く沈める花野かな 石鼎

月未だ色に出でざる花野かな 播水

峰ありて起る雲ある花野かな 石鼎

山暮れて寂しうなりし花野かな 草城

晩鐘のひびきけぶらふ花野かな 草城

観世音おはす花野の十字路 茅舎

釣人のちらりほらりと花野道 茅舎

釣針をひさぐ一つ家花野道 茅舎

いでたちのひとしき僧や花野ゆく みどり女

額へやる我手つめたき花野かな 石鼎

碓氷の灯花野の珠とつゞり見ゆ かな女

朝かげにたつや花野の濃きところ 石鼎

額へやる我手つめたき花野かな 石鼎

鐘楼より稚児我を嬲る花野かな 泊雲

みづうみの水のつめたき花野かな 草城

樽前に日は落ちてゆく花野かな 青邨

白樺の牧の柵より花野かな みどり女

なつかしや花野に生ふる一つ松 虚子

鳴る音の梓川なる花野かな 青畝

今日の日を穂高にのこす花野かな 青畝

花野きて又しも橋を渡りけり 占魚

をさなきを二人つれ佇つ花野かな 占魚