和歌と俳句

大野林火

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唐黍に白雲盆も過ぎにけり

会津つ子の黒瞳も露の二粒よ

音楽湧くごとく林檎の赤らめり

拝みきし佛の数とゐる夜長

水澄めり明治の時計塔うつり

古人多く旅に死すの鳴き綴る

佛壇と背中合せの蜩谷

盆路を雲の中より刈りはじむ

夜の山を大きく見せて星流る

追はるること天にもありや星流る

家中を秋草にせよと抱へ来る

鰯雲粛々と延ぶいのちなが

火なき爐の灰に秋風と書きて消す

みほとけの一隅貰ひ月に座す

杉折れて嵐のあとのまま良夜

藪に集り畦々に散り曼珠沙華

栗飯のもりあがる黄をほぐし食ふ

照りて山のこだまを通すなり

みちのくの頭良くなる湯に夜長

夜長人伊達さまの湯に居眠れる

鳴き過ぐを雁といひ湯に立ちあがる

山日和下界の稲も終りたる