和歌と俳句

柿くふや生きて還りし目のひかり 楸邨

柿の朱さふたたび逢はぬ人の前 楸邨

柿食ふや松山人の顔黙り 波郷

よろよろと棹がのび来て柿挟む 虚子

山岨をうつろふ雲に柿熟す 蛇笏

円柱より顔現れて柿食へり 楸邨

共に噛む柿の冷たさを訣れとす 楸邨

渋柿の滅法生りし愚さよ たかし

柿紅葉地に敷き天に柿赤し たかし

立出でて遠里小野の柿日和 たかし

到来の柿庭の柿取りまぜて虚子

追ふ如く柿もぎにやりもてなさる 汀女

柿むくやよべは茸を選りし灯に 蕪城

柿あかき野に生ひ立てよまた会はむ 秋櫻子

うみおちてつちにながるるかきのみのただれてあかきこころかなしも 八一

山柿の雨に雲濃くなるばかり 蛇笏

生きのこりゐて柿甘き秩父かな 楸邨

柿赤く旅情漸く濃ゆきかな 虚子

柿むく手母のごとくに柿をむく 三鬼

柿十顆遠江より来たりける 草城

早口の姪が呉れたる柿あまし 草城

健気なり稚木の柿も実をかかげ 草城

柿の朱もおもひつづけてねむりたし 楸邨

柿の辺のひとりごとさへ今はなし 楸邨

柿の味一片も歯に固きのみ 亞浪

老妻の剥きし柿食ふ老夫かな 草城

柿捧ぐ少女に墓は燃立つか 波郷

柿食ふや遠くかなしき母の顔 波郷

水飲むが如く柿食ふ酔のあと 虚子

柿喰ふや鵯の啼く音は寒しとふ 亞浪

朝の柿潮のごとく朱が満ち来 楸邨

柿の朱に亡びざるもの何々ぞ 楸邨