和歌と俳句

高浜虚子

前のページ< >次のページ

われの星燃えてをるなり星月夜

広重の七夕の画が祭りあり

病人の根の尽きたる残暑かな

雲の峰吹きたわみけり初嵐

いつまでも吠えゐる犬や木槿

おさへたる手重なりぬきりぎりす

初潮に沈みて深き四ツ手かな

蜻蛉や砂丘のかげに直江津が

秋の蠅うてば減りたる淋しさよ

引揚ぐる船を追ひうつ秋の波

蚊帳干せる橋の手摺や鯊の汐

突堤の先の鳥居や鯊の汐

川中の杭に腰かけ鯊を釣る

秋晴や太刀連峰は濃紫

麓なき雲の峰あり秋の風

秋風のだんだん荒し蘆の原

秋雨の背の子は仰ぐ傘の裏

破れたる網に蜘居る秋の雨

門に出て夫婦喧嘩や落し水

百舌鳥森に叫びおはぐろ藻にとべり

干網のかげをあびをり菊の鉢

掛稲をとりて黄菊の尚存す

浦安の子は裸なり蘆の花

団栗を掃きこぼし行く帚かな