和歌と俳句

七夕 たなばた

七夕の山家の蕎麦にまねかるる 秋櫻子

七夕や雲のたむろす裏高尾 秋櫻子

七夕や髪ぬれしまま人に逢ふ 多佳子

七夕や逢へばくちびるのみとなる 草城

隣る家の七夕紙は白ばかり 虚子

隣り親し七夕竹を立てしより 虚子

うち立てて七夕紙は少なくて 虚子

うち立てて七夕竹を恋ふるかな 虚子

七夕流す沼水流れざるものを 多佳子

行人の見る七夕を結びけり 汀女

林檎のうへに七夕の不二淡し 秋櫻子

海月群れ七夕の潮なほ暮れず 秋櫻子

カンナ咲き七夕の不二に雲騰る 秋櫻子

荒瀬波立てゝ七夕の瀬はしる 秋櫻子

まだ書かぬ七夕色紙重ねあり 虚子

手より舞ふたなばたさまを結びけり 青畝

七夕や檜山かぶさる名栗村 秋櫻子

たなばたの天横たはる廓かな 夜半

七夕や深夜の療衣あまた垂れ 草田男

七夕色紙松山夜風は更けてから 草田男

七夕や手休み妻を夕写真 草田男

七夕やまだ指折つて句をつくる 不死男

七夕や男がうたふ子守歌 鷹女

七夕や父口ずさむ祖母の唄 立子

七夕の細雨に濡るる田水らも 鷹女

七夕の萱野の雨となりにけり 万太郎

漆喰の漁家に七夕まつりけり 青畝

七夕やことりともせず骨休め 静塔

墨折れて七夕雨となりにけり 不死男

七夕の子の前髪を切りそろふ 林火