和歌と俳句

七夕 たなばた

うれしさや七夕竹の中を行く 子規

七夕やおよそやもめの涙雨 子規

七夕の竹屋の渡しわたりけり 虚子

えらみ置きし七夕竹を伐りにけり 虚子

七夕に古き行燈を洗ひけり 虚子

晶子
たなばたや簾の外なる香炉のけぶりのうへの天の河かな

晶子
妹が間は床の瑪瑙の水盤にべにばす咲きぬ七月七日

晶子
いもうとと七夕の笹二つ三つながるる川の橋を行くかな

七夕や夜をはなるる海の鳴り 龍之介

七夕や皆妓となる舞の友 万太郎

七夕や駅も浦なる波の音 万太郎

七夕や笹の葉かげの隠れ星 鬼城

七夕や布団に凭れ紙縒る子 久女

七夕や灯さぬ舟の見えてゆく 亞浪

七夕を押し返す風ありにけり みどり女

七夕竹立つるや色紙地にのこる 播水

七夕竹捨てて流れぬ水なりし 播水

七夕や筆の穂なめし唇の墨 淡路女

七夕やおしろい匂ふ古娘 草城

玄関に七夕竹や京の宿 播水

七夕や京の色紙を買ひにやる 播水

七夕のみな冷え冷えと供物かな 蛇笏

七夕や旅をわが来し地獄村 誓子

七夕や真赭の地獄湧きたぎつ 誓子

七夕竹たぎつ地獄の辺に立てる 誓子

七夕や偏照光のさせる地獄 誓子

七夕や心もとなき朝ぐもり 淡路女

七夕の色紙結ふ手のあひにけり 爽雨

誰が結ひし七夕色紙梅ヶ枝に 風生

七夕や一と降りしたる四方の藍 月二郎

うち立てて七夕色紙散るもあり 淡路女

七夕を東海道の松に結ひ 青邨

七夕や男の髪も漆黒に 草田男

たなばたの紙落ち石のなまめきぬ 青畝

七夕や夜空展け来水の面 鷹女

七夕の心に朝の竹かつぐ みどり女

七夕のほろびたる朝移民発つ 静塔

昼畳七夕様の塵を掃く みどり女

七夕の荒波をわたる舟ひとつ 秋櫻子

七夕の空澄み火口雲もなし 秋櫻子

七夕の子の前髪を切りそろふ 林火

七夕や風にひかりて男袖 耕衣

七夕や木の間の池はすでに暮れ 秋櫻子