和歌と俳句

永田耕衣

踊り子にトマトのこれる畑かな

秋風に瓣ゆるみたる薔薇かな

わが足へ如来の御瞳や秋の草

鶴降りて秋草くもるところかな

蟲籠にほとけのともしもつれあふ

秋の野に立つて秋野を見ざるなり

よこたはるからたち垣や秋の暮

蝶波にとまりてやすし十三夜

秋風やからみかはりし水馬

くろかみを束ねておもし拾ひ

まんなかを刈りてさみしきかな

大日如来われもうつくし秋の草

死ぬ蝶は波にとまりぬ十三夜

路草にむかひて萎む木槿かな

天なるや童女の声の蟲の声

明かき野や蟲聴く人を失へる

秋の雲掌にあつまるを多としける

朝顔や到るところに友が待つ

天の川硝子こはれし家に靠れ

棘のひとのまなこの移り行く

落し水母の白髪のきはまりぬ

七夕や風にひかりて男袖

朝の日の母を訪はばや蛍草

母を訪ふ足音ながらに秋の風

うそ寒や草の根這へる裏の山