いづかたも脚下なりけり葛の花
芋食つて今様地獄なつかしき
白露や世渡りの猪現わるる
足わらねば足りて在るなり秋の暮
此の土のいつまで土や秋の蝶
此の池をもつと知りたし秋の暮
残菊や今何買いに出る我ぞ
秋茄子己に浅く沈滞せよ
投網や桃の葉附きの梨一つ
天地も子供なりけり櫨紅葉
梨取れば寺院案ずる素振也
梨の身の滲む白さや後頼む
物感として頭脳在り秋の暮
我生きて在るは人死ぬ菊花哉
前の世に古池とんぼ噛みつきぬ
窓のようなる寂しさよ赤とんぼ
如何に心貧しき肉体や柚子の空
葱を新しと言うなり秋の暮
秋霜や土橋の小口撫で行く人
秋霜の足裏瞼も藻色かな
秋茄子を見る我が骨組の役立ち
晩年や赤きとんぼを食いちぎる
こおろぎを蜘蛛と見誤るは恋し
秋茄子や此方に来たらぬ花の濃さ
後の世を噛み捨て来るや赤とんぼ