餡の掌をなするや露の菩提樹に
荒野菊身の穴穴に挿して行く
鴉横に居て肩痛し秋の暮
薪あり灰あり鳥の渡るかな
野渡りや殺佛殺祖秋茄子
鐘撞きに行くとは知らじ糸とんぼ
冷え翁極遠の机に肱懸けて
瓔珞と見れば水なり秋の暮
女類亦物物と在り素こおろぎ
椎の実と共に潰れき我一人
流星や墨壱丁を照らしたる
出歩けば即刻夢や秋の暮
大観念即大具体秋の暮
桔梗を引き寄せて体空しけれ
田荷軒耕衣夢葱居士薄
秋茄子の六角を我見落とさん
撫子や死なでむなしき人のむれ
金色の古池のこる秋の暮
歓談のあとで死にけり赤とんぼ
古池やあかつきごとの夕奈落
秋の霜ギイと容顔廻されき
永遠が飛んで居るらし赤とんぼ
何者の足行く秋暮金泥経
人体を乗せむとすなり秋の風