和歌と俳句

菊咲けり陶淵明の菊咲けり 青邨

菊畑に手鞠はひりぬ菊にほふ 青邨

旅をして来て爪をきる菊の前 青邨

菊の香や芭蕉の繿褸金色に 茅舎

庭の菊帰れば暮れて見る日なく 花蓑

黄菊先づ車窓馳すなり町近し 汀女

窓の灯に菊を映して寝まり居り 汀女

楽器店菊咲き楽器ひやゝかに 桃史

楽やみてまなこ開けば菊すめり 桃史

菊すめり楽器売りたるレヂスタア 桃史

佇める人に菊花のうつ伏せり 虚子

人去りて冷たき石に倚れる菊 虚子

夕日いま百株の菊に沈まんと みどり女

送別会せしもこの室供華の菊 みどり女

十字架を埋めつくせる菊白し みどり女

身仕舞や縁にいたはる菊にほひ 

つややかな竹の床几を菊に置く 虚子

白菊に今宵の酒をそとふくみ 茅舎

菊挿すや晨の部屋に菊の塵 波郷

ある宵の菊のおごりにひとりゐぬ 波郷

菊古ればもて来し友はもてゆきぬ 波郷

菊の香にきよらに寝たり朝ちかく 波郷

熱帯魚秋はどこにも菊咲けり 波郷

菊の虻蕊を抱へて廻りけり 花蓑

にごりなき心に菊を咲かしめぬ 鷹女

菊白くわが手の時計秒を刻む 鷹女

菊咲いて幾年対ひ合ふ屋根ぞ 波郷

膝がしら旅もどり来ぬ夜の菊 波郷

黄菊の香たかし花影のしづかにて 秋櫻子

うなゐらの髪光りあそぶ菊たわゝ 青邨

白菊ぞ黄菊ぞふるき年重ね 青邨

菊暮るゝ倚門の母は今もあり 青邨

菊の香や佳節を想ひ母をおもふ 

峡わたる日が真上より菊に差す 誓子

菊に対ひ身に高山を繞らする 誓子

夜を照るや黄紫二枝の瓶の菊 友二

菊の前しづかに墨を摺りゐたり 波津女

菊咲きてこの山熱き湯を噴けり 波津女

唐崎や菊の籬の舟繋ぎ 尾崎迷堂

既にして東雲明り菊にあり 花蓑

白菊に起居の塵のおきにけり 風生

吾子は絵の我は祷りの菊咲いて 楸邨

大輪の白菊の辺がまづ暮れぬ 楸邨

夜の菊遠く潮さすとどろきか 楸邨

わが老をわがいとほしむ菊の前 風生

働きし身のさわやかに夜の菊 汀女

白菊の中の大輪とけそめし 占魚

白菊のあしたゆふべに古色あり 蛇笏