和歌と俳句

面影の隠逸伝やかた見草 言水

菊に来て長生つらし土竜 言水

我年を花にたしけり菊作 来山

年なえのけふそ菊の瀬酒の淵 来山

菊の淵年経てぬしに角もなし 来山

盃の下ゆく菊や朽木盆 芭蕉

盃や山路の菊と是を干す 芭蕉

白菊よ白菊よ耻長髪よ長髪よ 芭蕉

起あがる菊ほのか也水のあと 芭蕉

山中や菊はたおらぬ湯の匂 芭蕉

はやくさけ九日も近し菊の花 芭蕉

朝茶のむ僧静也菊の花 芭蕉

稲こきの姥もめでたし菊の花 芭蕉

初霜や菊冷初る腰の綿 芭蕉

影待や菊の香のする豆腐串 芭蕉

菊の花咲や石屋の石の間 芭蕉

琴箱や古物店の背戸の菊 芭蕉

菊の香やならには古き仏達 芭蕉

菊の香やならは幾代の男ぶり 芭蕉

菊の香やくらがり登る節句かな 芭蕉

菊に出て奈良と難波の宵月夜 芭蕉

しら菊の目に立てて見る塵もなし 芭蕉

み所のあれや野分の後の菊 芭蕉

菊の香のひとつをのこす匂ひ哉 鬼貫

黄菊白菊其外の名はなくも哉 嵐雪

志賀越とありし被や菊の花 嵐雪

菊畑おくある霧のくもり哉 杉風

秋はまづ目にたつ菊のつぼみ哉 去来

煮木綿の雫さびしや菊の花 支考

手に付て妹がねたむかきくの綿 土芳

雁鳴て目をあく菊のつぼみ哉 土芳

欄干にのぼるや菊の影法師 許六

人からも古風になりて黄菊哉 史邦

菊の香や流れて草の上までも 千代女

栗栖野に垣も謗らずきくの花 也有

しら菊や庭に余りて畠まで 蕪村

白菊や呉山の雪を笠の下 蕪村

二本づつ菊まいらする仏達 蕪村

長櫃に鬱々たる菊のかほりかな 蕪村

手燭して色失へる黄菊哉 蕪村

白菊の一もと寒し清見寺 蕪村

菊の香やひとつ葉をかく手先にも 太祇

菊さくや我に等しき似せ隠者 一茶

汁鍋にむしり込だり菊の花 一茶

我菊や形にもふりにもかまはずに 一茶

鍬さげて神農顔やきくの花 一茶

汁の実の足しに咲けりきくの花 一茶

わたつみの波がよすると見るまでに枝もたををに咲ける白菊 良寛