和歌と俳句

松尾芭蕉

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ぞしるべこなたへ入せ旅の宿

秋風の鑓戸の口やとがりごゑ

七夕のあはぬこころや雨中天

たんだすめ住めば都ぞけふの月

影は天の下てる姫かのかほ

の声こや秋風の口うつし

寝たるや容顔無礼花の顔

かつら男すまずなりけり雨の月

女をと鹿や毛に毛がそろふて毛むつかし

見るに我もおれる計ぞ女郎花

見る影やまだ片なりも宵月夜

けふの今宵寝る時もなき月見

命こそ芋種よ又今日の月

文ならぬいろはもかきて火中哉

人毎の口に有也したもみぢ

町医師や屋敷がたより駒迎

針立や肩に槌うつから衣

武蔵野や一寸ほどな鹿の声

盃の下ゆくや朽木盆

詠るや江戸にはまれな山の

秋来にけり耳をたづねて枕の風

唐秬や軒端のの取ちがへ

枝もろし緋唐紙やぶる秋の風

今宵の月麿出せ人見出雲守

木をきりて本口みるやけふの月