秋十とせ却て江戸を指故郷
霧しぐれ富士をみぬ日ぞ面白き
雲霧の暫時百景をつくしけり
猿を聞人捨子に秋の風いかに
道のべの木槿は馬にくはれけり
馬に寐て残夢月遠し茶のけぶり
みそか月なし千とせの杉を抱あらし
芋洗ふ女西行ならば哥よまむ
蘭の香やてふの翅にたき物す
蔦植て竹四五本のあらし哉
手にとらば消んなみだぞあつき秋の霜
わた弓や琵琶になぐさむ竹のおく
僧朝顔幾死かへる法の松
碪打て我にきかせよや坊が妻
露とくとく心みに浮世すすがばや
御廟年経て忍は何をしのぶ草
冬しらぬ宿やもみする音あられ
木の葉散桜は軽し檜き笠
義朝の心に似たり秋の風
苔埋む蔦のうつつの念仏哉
しにもせぬ旅寝の果よ秋の暮
白菊よ白菊よ耻長髪よ長髪よ
雲折をり人をやすむる月見哉