和歌と俳句

松尾芭蕉

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石山の石より白し秋の風

庭掃て出ばや寺にちる柳

物書て扇引さく名残哉

名月の見所問ん旅寐せむ

月見せよ玉江の蘆を刈ぬ先

あさむつや月見の旅の明ばなれ

あすの月雨占なはんひなの岳

月に名を包みかねてやいもの神

義仲に寝覚の山か悲し

中山や越路も月はまた命

国ぐにの八景更に気比の月

月清し遊行のもてる砂の上

名月や北国日和定なき

月のみか雨に相撲もなかりけり

月いづく鐘は沈る海のそこ

ふるき名の角鹿や恋し秋の月

さびしさや須磨にかちたる浜の

波の間や小貝にまじるの塵

小萩ちれますほの小貝小盃

衣着て小貝拾はんいろの

鳩の声身に入わたる岩戸哉

かくれ家や月と菊とに田三反

胡蝶にもならで秋ふる菜虫哉

其ままよ月もたのまじ伊吹山

こもり居て木の実艸のみひろはばや