和歌と俳句

炭 太祇

名月や君かねてより寝ぬ病

名月や花屋寐てゐる門の松

うかれ来て蚊屋外しけり月の友

後の月庭に化物作りけり

灯の届かぬ庫裏やきりぎりす

大根も葱もそこらや蕎麦の花

うら枯ていよいよ赤しからす瓜

萩活て置けり人のさはるまで

石榴喰ふ女かしこうほどきけり

喰ずともざくろ興有形かな

菊の香やひとつ葉をかく手先にも

旅人やきくの酒くむ昼休み

残菊や昨日迯にし酒の礼

朝露や菊の節句は町中も

有侘て酒の稽古やあきの暮

ひとり居や足の湯湧す秋のくれ

泊居てきぬた打也尼の友

菊の香や花屋が灯むせぶ程

剃て住法師が母のきぬた

夜あらしに吹細りたるかゞし

やゝ老て初子育る夜寒かな

旅人や夜寒問合ふねぶた声

朝寒や起てしはぶく古ごたち

椽端の濡てわびしやあきの雨

茄子売揚屋が門やあきの雨