和歌と俳句

炭 太祇

いなづまや舟幽霊の呼ふ声

鬼灯や掴み出したる袖の土産

二里といひ一里ともいふ花野

餓てだに痩んとすらむ女郎花

其葉さへ細きこゝろや女郎花

鶏頭やはかなきあきを天窓勝

鶏頭やすかと仏に奉る

蜘の囲に棒しばりなるとむぼ

静なる水や蜻蛉の尾に打も

荻吹や燃る浅間の荒残り

椋鳥百羽命拾ひし羽おと哉

秋さびしおぼえたる句を皆申す

ものゝ葉に魚のまとふや下簗

に垣ねさへなき住居かな

みどり子に竹筒負せて生身魂

浅川の水も吹散る野分かな

渡し守舟流したる野分哉

芋茎さく門賑しやひとの妻

おもはゆく鶉なく也蚊屋の外

身の秋やあつ燗好む胸赤し

みそなはせ花野もうつる月の中

三日月の船行かたや西の海

みか月や膝へ影さす舟の中

雨に来て泊とりたる月見かな

狂はしやこゝに月見て亦かしこ