和歌と俳句

秋の空

源氏物語・榊
暁の別れはいつも露けきをこは世にしらぬ秋の空かな

源氏物語・宿り木
いたづらに分けつる路の露しげみ昔おぼゆる秋の空かな

俊頼
草の葉に風をとづれて夜と共に涙もよをす秋の空かな

俊成
月よりも秋は空こそあはれなれ晴れずはすまむかひなからまし

式子内親王
ながむれば木の葉うつろふ夕月夜ややけしきだつ秋の空かな

むかしから穴もあかずよ秋の空 鬼貫

秋の空尾上の杉をはなれたり 其角

上行と下くる雲や龝の天 凡兆

秋の空昨日や鶴を放ちたる 蕪村

行先に都の塔や秋の空 太祇

橋見えて暮かかる也秋の空 一茶

良寛
晴るるかと思へばくもる秋の空うき世の人の心知れとや