我年を花にたしけり菊作
年なえのけふそ菊の瀬酒の淵
菊の淵年経てぬしに角もなし
唐がらし茄子にあけも奪れず
秋たつやはじかみ漬もすみきつて
稲妻に負ず実の飛ぶ蓮かな
僧ひとり師走の野道梅の花
お奉行の名さへ覚へずとしくれぬ
としの瀬や漕ず楫せず行ほどに
揉にもむ歌舞妓の城や大晦日
干網に入日染つつしぐれつつ
鑓買てもどるに寒きしぐれ哉
松吹て横につららの山辺かな
人の世の人の仮寝や置ごたつ
火桶売おのれが老は覚む歟
目ばかりは達磨に負じ冬籠り
顔見世や戻りにそしる雪の寸
年のいそぎ書とむなしや只の状
浅ましやまだ十月の暦うり
更行や紙衣に見ゆる老のわざ
ひとり寝や幾度夜着の襟をかむ
此いとし身をしかられて薬喰
何の木ととふ迄もなし帰花
冬大根俵の中で芽出しけり