横井也有
寝過して大工来にけり今朝の秋
千葉どの ゝ庭にもけさは一葉かな
馬はあれど牛や木幡の星迎
蓑むしも父よぶころや魂祭り
蚊のしらぬ客あはれ也魂まつり
おくり火の跡は此世の蚊やり哉
長ひ夜を輪にして明すおどり哉
日ぐらしや木に啼むしはまだ暑し
はたをりや娵の宵寝を謗る時
虫のねの掃れて遠し寺の庭
タぐれや蚊を聞かへて荻の風
鹿なけと戻るか奈良の晒売
蜘の囲のはしらによはき 薄かな
晴てけさ空はよごれぬ野分哉
雁よりは哀も低しわたり鳥
鵙啼や夕日の残る杉の末
すり減らす秋や木賊に風の音
芋の葉や蓮かと問へばかぶり振る