和歌と俳句

横井也有

十一

寝過して大工来にけり今朝の秋

千葉どの ゝ庭にもけさは一葉かな

馬はあれど牛や木幡の星迎

蓑むしも父よぶころや魂祭り

蚊のしらぬ客あはれ也魂まつり

おくり火の跡は此世の蚊やり哉

長ひ夜を輪にして明すおどり

日ぐらしや木に啼むしはまだ暑し

はたをりや娵の宵寝を謗る時

虫のねの掃れて遠し寺の庭

タぐれや蚊を聞かへて荻の風

鹿なけと戻るか奈良の晒売

蜘の囲のはしらによはき かな

晴てけさ空はよごれぬ野分

雁よりは哀も低しわたり鳥

鵙啼や夕日の残る杉の末

すり減らす秋や木賊に風の音

芋の葉や蓮かと問へばかぶり振る