和歌と俳句

横井也有

十一

ひる顔やかり橋残る砂河原

ゆふ顔や大工にわたす行水場

タがほや月の鏡もまたでさく

葛に汲水の行ゑや御禊川

芳野をも見ずにことしもかな

聞かぬとし有も命ぞ蜀魂

みじか夜や蚤ほと ゝぎす明のかね

短夜や棚に鼠の明のこり

蝶々も来て乳を吸ふや花御堂

我門へ尻の近よる田植かな

や盗人に縄かけらる ゝ

もやすでも消すでもなふて蚊遣り

蚊はこちへはいる隣のかやり哉

憎ひ蚊と同じ盛のほたる

橋の下ちぎれて通る螢かな

ふたつとも飛ぱず雨夜の螢かな

昼見てはきたなひ水に螢かな

夕暮の蟻握りこむ牡丹

胸をやむ人を似せてや百合の花