横井也有
ひる顔やかり橋残る砂河原
ゆふ顔や大工にわたす行水場
タがほや月の鏡もまたでさく
葛に汲水の行ゑや御禊川
芳野をも見ずにことしも袷かな
聞かぬとし有も命ぞ蜀魂
みじか夜や蚤ほと ゝぎす明のかね
短夜や棚に鼠の明のこり
蝶々も来て乳を吸ふや花御堂
我門へ尻の近よる田植かな
筍や盗人に縄かけらる ゝ
もやすでも消すでもなふて蚊遣り哉
蚊はこちへはいる隣のかやり哉
憎ひ蚊と同じ盛のほたる哉
橋の下ちぎれて通る螢かな
ふたつとも飛ぱず雨夜の螢かな
昼見てはきたなひ水に螢かな
夕暮の蟻握りこむ牡丹哉
胸をやむ人を似せてや百合の花