横井也有
すがたみにうつる月日や更衣
夏たつや衣桁にかわる風の色
ほと ゝぎす三日聞ねば初音哉
卯の花や手で追ふ程の蚊のゆふべ
着つつまだ馴ぬ袷やかきつばた
延るほど鷺はみじかき青田哉
隠居家にかくし子鳴るや紙幟
骨折をくべて木挽のかやりかな
貴ぶねへも火はいた ゞかで飛螢
我やみへもどる夜明のほたる哉
青梅に匂ひもあらば五月やみ
人が門た ゝけば逃るくゐな哉
村中にひよつと寺あり椶櫚の花
鮓売も人におさる ゝ祭かな
草刈の手に残りけり祭笛
初蝉の耳まで来たる暑哉
唐秬の中ゆく笠のあつさ哉
むかしむかし祖父も川へと 涼哉
白雨や揚る大工にさす日影