和歌と俳句

横井也有

十一

すがたみにうつる月日や更衣

夏たつや衣桁にかわる風の色

ほと ゝぎす三日聞ねば初音哉

卯の花や手で追ふ程の蚊のゆふべ

着つつまだ馴ぬ袷やかきつばた

延るほど鷺はみじかき青田

隠居家にかくし子鳴るや紙幟

骨折をくべて木挽のかやりかな

貴ぶねへも火はいた ゞかで飛

我やみへもどる夜明のほたる

青梅に匂ひもあらば五月やみ

人が門た ゝけば逃るくゐな

村中にひよつと寺あり椶櫚の花

鮓売も人におさる ゝ祭かな

草刈の手に残りけり祭笛

初蝉の耳まで来たる暑哉

唐秬の中ゆく笠のあつさ

むかしむかし祖父も川へと

白雨や揚る大工にさす日影