和歌と俳句

棕櫚の花

村中にひよつと寺あり椶櫚の花 也有

敷石や一丁つづく棕櫚の花 漱石

世はいづれ棕櫚の花さへ穂に出でつ 漱石

五六騎のかくれし寺や棕櫚の花 虚子

子規
里遠き門に車の音もなし昼寐の床に散る椶櫚の花

ぬきんでて雑木の中や棕櫚の花 漱石


きその宵雨過ぎしかば棕櫚の葉に散りてたまれるしゆろの樹の花


積みあげし眞木に着せたる萱菰に撓みてとゞく椶櫚の樹の花

白秋
夕されば棕梠の花ぶさ黄に光る公園の外に坐る琴弾者

棕櫚の花句作につけて見る日かな 虚子


洗ひ米かわきて白きさ筵に竊に椶櫚の花こぼれ居り

恋ひ老いて貧苦に梳けり棕櫚の花 蛇笏

棕櫚の花こぼれて掃くも五六日 虚子

簀戸たてて棕櫚の花降る一日かな 久女

花棕梠や昔ながらの大藁家 悌二郎

花棕梠のあたりまばゆき煙雨かな 鷹女

花棕櫚の雨より遠き月日かな 楸邨

よき妻とともに壮年棕櫚咲けり 草田男

棕梠の花また朝影の濃きところ 汀女

棕梠の花やうやく雨を呼びにけり 汀女

花棕櫚やなごむ余地なき一倒心 草田男

棕梠の花猫糞る顔のハート型 不死男

棕櫚の花港の風も忘れじよ 汀女

棕梠の花鬱と寸伸びゐたらずや 林火