和歌と俳句

薔薇

曙覧
羽ならす蜂あたゝかに見なさるゝ窓をうづめて咲くさうびかな

赤薔薇や萌黄の蜘の這ふて居る 子規

薔薇剪つて手づから活けし書斎哉 子規

障子あけて病間あり薔薇を見る 子規

椅子を置くや薔薇に膝の触るる処 子規

子規
たまたまに窓を開けば五月雨にぬれても咲ける薔薇の赤花

薔薇の花楽器いだいて園にいでぬ 虚子

薔薇剪つて短き詩をぞ作りける 虚子

薔薇呉れて聖書かしたる女かな 虚子

薔薇散るや前髪崩れたる如く 虚子

子規
草枕 旅ゆ歸れば 我庭の 赤薔薇散りて 白薔薇咲きぬ

薔薇ちるや天似孫の詩見厭たり 漱石

利玄
愛に酔ふ雌蕊雄蕊を取りかこむうばらの花をつつむ昼の日

晶子
さうび散る君恋ふる人やまひして密に知りぬ死の趣を

晶子
若き子の香ばしきこと云ふ中にまじらむと咲くうす色さうび

晶子
薔薇咲くしろくはた黄にうす紅に刑の重きは墨色に咲く

晶子
船に居て青き水よりいづる月見しここちするうす黄の薔薇

晶子
木によりて匂へる薔薇秋山の蔦にまさりてはかなき薔薇

晶子
しづかなる森に向ひて丘めぐりきざはしのごと花薔薇さく

くたくたと散つてしまひぬ薔薇の花 鬼城